日本企業の決算月は3月が多い!その理由と決算月の決め方とは

決算書はなんのために必要なのか?


決算開示の目的と対象となる企業は? の記事でも触れましたが、決算開示には企業の透明性を確保するという役割があります。
ステークホルダーが企業の財務状況や経営実態を把握するほか、
M&Aや業務提携などでDD(デューデリジェンス)という調査を行う際に活用されることもある重要な情報です。

上場企業の決算開示の流れは?


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決算開示に必要な準備 補足説明資料とは?



例えば3月期決算の上場企業の場合、次のような流れで開示を行うことが多いです。


・4月下旬~5月中旬:決算短信の提出
・6月中旬:株主総会の招集通知
・6月下旬:株主総会の開催、有価証券報告書の提出 


決算短信は決算期末から45日以内の公表が求められています。
また、有価証券報告書(有報とも呼ばれる)は決算期末から3ヶ月以内に提出しなければなりません。
決算期末を迎えてから株主総会の開催まで3ヶ月の間、年度決算を取りまとめる経理部門、翌年度予算の策定や株主総会資料を作成する経営企画部門、株主総会の運営を行う総務部門など、管理部門全体の負担は特に大きくなります。

日本企業の多くが3月を決算月にしている

個人事業主については12月決算と定められているものの、法人は自由に決算月を決めることができます。
しかし、日本法人の決算月を見てみると、圧倒的に3月決算が多いことがわかります(次いで12月)。


決算月別の企業数の割合


決算月を決めるポイント

1)自治体等との取引が多いか

自治体は基本的に3月を決算月としています。
自治体への報告の際に、4月~3月の決算情報を求められるケースがあり、 その企業の決算月とズレていると別途報告用の資料が必要になる可能性があります。
自治体との取引が多い場合は、企業の決算月を3月にすることで実務負担を軽減することができるでしょう。
また、税制改正が4月1日から適用となりやすいため、スムーズに対応するために3月を決算月にしている企業も多いです。

2)繁忙期と閑散期はどちらに決算月を設定するべきか

季節変動性の著しい事業では、企業の繁忙期に決算月を設定することは一案です。
年度末に繁忙期を迎え、勢いそのまま大きな収益を獲得するタイミング、もしくは財務状況が良化するタイミングで決算を作り上げるケースが少なくありません。
繁忙期と決算月が重なることで、担当部署の業務に無理が生じることも考えられます。
決算月を決定する場合は、事業サイクルも考慮しましょう。

逆に、決算月を閑散期に設定することにもメリットはあります。
決算月を閑散期に設定している場合(=繁忙期から決算期を迎えるまでに時間がある場合)は、
例えば、繁忙期に利益額が上振れしたときに、決算までに納税を含む決算対策を行うことができます。
また、繁忙期に利益額が下振れしたときは、業績回復の施策を見直す期間に当てることもできます。

3)上場企業やIPO準備中の企業は監査法人の繁忙期にも注意を

日本では3月決算の企業が多いため、監査法人は3月決算に対応するタイミング(4月下旬~)で繁忙のピークを迎えます。
新たに3月決算の企業は受託しないと表明するケースさえあります。

また、半期決算、四半期決算も監査法人対応は求められるため、
3月・6月・9月・12月の決算月を設定している企業は、3月決算企業と同様に、監査法人の「見つけづらさ」を自覚しておくことが必要なのです。

最近では「監査難民」という言葉も知られるようになるほど、IPOを目指す企業にとって監査法人選定のハードルが高くなっています。
これは監査報酬やIPO準備企業を監査することのリスクテイクなど、繁忙期であること以外にも理由はありますが、 監査法人の繁忙期を避けて決算月を設定することはIPO準備企業にとってはメリットになり得ます。



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決算月を変更する場合

決算月は事業を開始してからも変更可能です。
株主総会を開催し、決算月変更を決議する必要があります。
決議がなされると、税務署に「異動事項に関する届出」を行います。
ただし、決算月の変更により、実務者の業務負担が増えたり、金融機関等からの評価に影響を与えたりする可能性もあるため注意が必要です。

どんな企業にも、現在の決算月を定めるに至った理由や、なによりも、会社が年々刻んできた決算月の歴史があります。
「上場するため」「監査法人を見つけるため」だけに決算期変更を行うことは必須ではないので、まずは上場支援者や専門家に相談してみてはいかがでしょうか。



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