監査法人は見た!IPO準備がスムーズな企業が重視しているカルチャーの話

コロナなどの世界情勢を含め、予期せぬ事態でIPOが延期になってしまうケースは残念ながらあります。

では、そのような非常事態を乗り越えて、IPO準備を推進していける企業にはどんな特徴があるのでしょうか?

今回は、監査法人での勤務経験者の話を元に、実際の現場で起こっていることをご紹介します。

全社一丸となってIPOを達成したA社

IPOを達成したのは創業から11期目でした。

上場前から、経営陣とメンバーが一丸となってIPOを目指していて、団結した雰囲気がありました。


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カルチャーフィットを重視した採用

人事責任者は管理部長が兼任しており、専任の担当者はいない状況でしたが、

企業のカルチャーにフィットしているかどうかを重視した採用をおこなっていました。


この企業は、IPO準備が佳境となり大変慌ただしかった最中でも、退職者はほとんど出ませんでした。

人手不足の部署には積極的に新メンバーを迎え、昇格などの評価制度もあり、ポジティブな人の流れがありました。

IPO直前は管理部のメンバーも疲れている様子でしたが、人員は充足しており代わる代わる休暇も取れていました。

徹底したMVVの浸透

経営陣はもちろん、メンバーのひとりひとりがMVVを理解し、体現しようと心がけていました。

目につく場所や、全社集会でもMVVについて話す機会を確保した結果、社長の意思決定にも納得感が高かった印象です。

また、自分たちの事業がいかに社会に貢献しているかを誇りに感じていました。

\こちらの記事でもMVVの重要性について解説しています/

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みんなが見渡せるオフィス


広いワンフロアで、上司も部下も一目で見渡せるオフィスが好評でした。

社長を含む経営陣が生き生きと仕事に邁進する姿が見えることが、メンバーの志気を高めていたようです。

また、人数が増えたり顧客が増えたりといった事業の成長が、手に届く範囲で見えていたこともプラスに働いていました。

チャットツールなどのオンラインのコミュニケーションツールを整えつつも、全体的に明るく和気あいあいとした雰囲気が漂っていました。

中立の立場を貫けるCFOの存在

リファラルで採用されたCFOでしたが、社長に管理体制や現場のシステムの不備について強く進言できる人でした。

また、企業としてのビジョンをメンバーに伝えることにも長けており、組織としてのまとまりをつくっていました。

IPO延期をくり返し、ついには諦めてしまったB社

現場の志気を高め、一丸となってIPOを達成できた企業がある一方で、N-3期やN-2期から抜け出せない企業もあります。

決定的な違いはどこにあったのでしょうか?

IPOに関する経営陣とメンバーの温度差

IPOを目指す意味や、社会における事業の存在意義の認識について、経営陣と現場で温度差がありました。

社長にビジョンを問えば目を輝かせて語るのですが、メンバーからは企業のMVVの話や、社会貢献の話などは聞かれませんでした。

ストックオプションなどの報酬制度や福利厚生は充実していましたが、団結するための決定的な効果を発揮しなかったようです。

応急処置的な人員補充

経営陣と現場の温度差は、退職者を増加させました。

その結果、1人あたりの業務負荷が増えてしまい、さらに退職者が出るという悪循環が起こっていました。

すでにIPO準備も佳境にさしかかっており、経験と経歴を重視した採用を早急に進めました。


リソース不足から、CFOが採用プロセスのすべてを管掌していました。

忙しい業務の合間を縫っての採用活動だった上に、とにかく人員補充が急がれたので、

その際にビジョンの共有などができておらず入社してもすぐに辞めてしまうことが相次ぎました。

さらには、経営陣が事業部側への投資を優先し、

管理部門の採用ストップを決定してしまったため、さらに管理体制が脆弱になっていきました。

実際のIPO経験から感じたIPO準備の実態

ユニチューブ【IPO準備企業必見】経験者が語るIPO準備の実態とは?| Vol.1【株式会社Macbee Planet 代表/千葉 知裕 氏】

こちらの記事の中で、マクビー代表の千葉さんのインタビューでもありましたが、

会社全体をIPOを目指す雰囲気にすることがいかに大事かがわかる事例です。


実は、待遇面やオフィス環境、役員陣の経歴はB社のほうがよかったのです。

にも関わらず、IPOを達成したのはA社でした。

そこから見えるのは、IPO準備を進める際の人的資本経営の重要性です。

今回ご紹介した事例は、IPOを達成する上で必ず実施しなければならないものではありません。

しかし、これは一朝一夕で整えられる体制ではないことも事実です。

IPO含め事業を持続的に成長させていきたい場合は、参考にしてみてください。