最終更新:2024年10月16日

IPO準備をスケジュールの遅れなく、
スムーズに進めるための5つのポイント!

IPO経験者に聞くと「とにかく準備が大変だった!」という話が次々と飛び出します。

取り組むタスクの多さや、後から次々と湧いてくる未解決の課題に疲弊し、挙句、IPOが遅延するという想定していなかったフルコースを走り抜けたという企業も多いようです。


IPO準備をスムーズに進めることは不可能なのでしょうか?
いえ、決して不可能ではありません!

IPOを目指す企業が押さえておきたい5つのポイントを解説します。
IPO検討中の経営層の方も、突然IPO準備を言い渡された担当者さんも、ぜひ参考にしてくださいね。

IPO準備でスタートアップ企業が抱えがちな課題

スタートアップ企業がIPO準備で抱えがちな課題とは?

多くのスタートアップ企業にとって、IPO準備が大変だと言われる理由には次のようなものがあります。

そもそもやることが多い!

IPO準備のタスクはざっと500を超えます。 これはオーソドックスな会社のケースです。

大量のタスクの進捗管理ができる人がいない

毎年多くの採用をする大手企業とは違い、スタートアップでは常に人的リソースが不足しています。
タスクを管理できる人材もプレイヤーとして前線で活躍する”プレイングマネージャー”であることが多いのが現状です。
500を超える大量のタスクを誰が管理できるのか?問題が発生してしまいます。

人材の確保が難しい

スキルが高く、IPO経験のある人材を集めることはスタートアップには難しいことが多いです。
人手不足は昨今の社会問題となっていますね。

事業推進にリソースを割くことが多い

IPO準備がどうしても優先順位から外れてしまいがちです。

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タスクが500を超えると聞いて、毎日の多忙な業務の間で達成できるのか、不安になる方も多いのではないでしょうか。

これが「IPO準備は大変だ」と言われる理由のひとつです。

多忙なスタートアップ・ベンチャーが、この大変さを乗り越えて、かつ大変さを最小限に抑えながらIPOをするためのポイントは次のとおりです。

5つのポイントを押さえてIPO準備をスムーズに進めよう!

1. IPO準備に必要なタスクを網羅的に把握し、自社特有の課題を認識しよう!

IPOコンサルタントや監査法人・証券会社のベテランでさえ、IPO準備タスクやその優先順位を、何も見ずに全て言える人はいないのではと思います。

500以上ある大量のタスクをクリアしていく必要があるため、闇雲にIPO準備をスタートしてしまうのは得策ではありません。

これからIPO準備を始めましょう!という会社はまず、必要なタスクを網羅的に把握することから始めるとよいです。

準備に漏れがあっては、最終的な監査法人や証券会社のIPO審査を通過することはできないからです。

まず知るべきは、

「審査を通すために何が必要か」

これを最初に把握できているかどうかは、あとのIPO準備がスムーズにいくかに大きく影響すると言えます。

冒頭で500以上のタスクがあるとお伝えしましたが、これはあくまでオーソドックスなIT企業のケースです。

飲食業やゼネコンなど、各社・各業種業態にフォーカスしてもう少し細かく見た場合、


東京証券取引所の「新規上場ガイドブック」
※上場審査の考え方や手続きを解説したガイドブックです

に登場する事項を網羅しても、足りない部分が出てくることが実際にあります。

必要なタスクや全体のスケジュールが明確になっている場合、監査法人や証券会社へアタックするタイミングも明確になり、目標時期通りにIPOを実現することの確度が高まります。

解決に時間がかかるタスクを後回しにしてIPOの遅延を招くことを防ぐためにも、業界特有のタスクについても把握しておくことが重要です。

2. 合格基準やガイドラインを基に過剰品質を求めない

各項目において、正式な合格基準は公表されていません。 ということは、IPO審査に通ればそれは合格ラインだった、ということになります。明確な基準がないのは不安になりますよね。

上場を目指すタイミングをN(エヌ)期と呼びます。
そこから逆算して、1ヶ月前が上場承認、そこからさらに3ヶ月前が東京証券取引所の審査開始日となります。

この表の場合で見ると、12月のIPOを目指している場合、

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11月:上場承認

9月:東証による審査開始

8月までに上場申請

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というスケジュールになります。

IPOの審査スケジュール



証券会社と東証の審査部から合格点が出れば通過

証券会社の引受審査、そして東証の上場審査と進み、証券会社と東証の審査部から合格点が出れば通過です。

この審査に耐えうるだけの準備をするために、N-2期中(大体2Q〜3Q)に入った後からは、証券会社の公開引受部のサポート受けながら進めていきます。

どこまで完璧に準備すれば安心か?

このように見てみると、準備は入念に、どこからどう見ても完璧に!と思ってしまいそうですが、過剰な完成度を求めないこともIPO準備では大事なポイントです。

1.でもお伝えしたように、タスクを網羅的に認識することはまず行うべきことですが、合格基準がわからない以上は一つのタスクにリソースを割きすぎることはオススメしません。



それよりも足りていないところや、組織として弱いと感じられるところから着手し、リソースや時間をうまく割り振って徐々に進めていきましょう。

コンサルタントに合格ラインに達しているか、そのレベル感を相談することもおすすめです。

3. 必要な規程類を整備し、各業務に合わせて運用しよう!

東証(東京証券取引所)のガイドラインでは、最低限46〜50個の規程を作るように定められています。

就業規則や販売管理規程など、作ったままで放置してしまうケースが多く、これでは合格基準を満たすことができません。 規程類はあくまで運用されていることが重要で、それが全従業員に周知され、業務上の不備なく日々の業務に組み込まれていることも求められます。


これは決して、エラーがゼロでなければならないというわけではありません。
規程を守らずに起こってしまったエラーに対しては、再発防止策や改善計画書があれば、合格基準として考慮されます。

各業務に合わせて作られているか、エラーが起きたときの対応策が考えられているか、普段の業務フローに組み込まれているかといったことが、IPO審査に大きく関わっていることは意外と知られていません。

実際に運用できているかどうかは、運用記録に残していくことになります。

--[注意]--

中には一発アウトになってしまうエラーもあります。
完全に上場延期になってしまう可能性もあるため、積極的に専門家に相談しましょう。
相談先は、監査法人、証券会社、コンサルタントとなります。


その他にも、複数の監査を受ける必要があります。

例えば以下のようなもので、エラーを発見して調査・分析を行います。

  • 内部統制監査(公認会計士・監査法人)
  • 内部監査室監査
  • 監査役による業務監査

三様監査


これらの3つの視点から業務を監査し、エラーを発見して調査・分析を行う方法を「三様監査」といいます。

これを理解し、適切に運用することでIPOに向けた準備をスムーズに進めることができます。

4. 実態にあった内部統制の整備・運用をしよう!

内部統制という大きなものの一部を構築するのが、3.でお話した規程類です。

しかし、規程だけでは内部統制を構築できません。 例えば「業務プロセス」についてです。

物販業であれば、次のような業務プロセスが発生します。

物販業の業務プロセス


この一連のプロセスに対する内部統制を敷く必要があるのです。

各業務プロセスにおいて、この承認や確認が取れれば、世の中に間違った流通や販売/仕入行為をしないなどの業務プロセスを作っていったところに、一ずつコントロール(統制)をつけていくことが内部統制の大枠と考えられます。

これは形式通りすればいいというものではなく、内部統制の整備を行う担当者と、今現場で行われていることや問題点を把握している業務担当者が、共に吟味しながら構築していく内容になります。

現場のキーマンとその事業部を巻き込んでいきましょう。

5. スケジュールの全体像を認識し、優先順位を定めよう!

IPO準備から上場までの流れ


IPO準備の全体像を認識せずに起こるリスクには、次のようなものがあります。

  • 不測の事態が起きるとIPO準備のプロセスが完全にストップしてしまう
  • 月次の通常業務を優先してしまい、IPO準備ができない
  • 全体像を把握していないので、優先順位がつけられない


解決までに時間がかかりそうなタスクや、すぐに取り掛かるべき重要度の高いタスクがどれなのかは真っ先に定めておきたいものです。


「なんで今になってこの問題が発生したんだろう」 「早くやっておけばよかった」 というのは、IPO準備企業が直面しやすい問題です。

通常業務や問題解決にかかる時間も見積もった上で、優先順位をつけることをオススメします!



N-1.5期に入れば、証券会社の公開引受部にIPO準備の相談をすることはできます。しかし、N-2期には監査も始まり、証券会社も入ってきています。すでにIPOの期日までに間に合わないボリュームのタスクが浮き彫りになって、IPO延期の事態を招いてしまう可能性もあるわけです。

そのため、遅くてもN-2期よりも前のN-3期には、IPOコンサルタントや公認会計士などの士業によるコンサルティングの依頼を始めるとよいとされています。

さらに、会社の根幹に関わるような重大な部分に関しては、N-4期から取り掛かるのがベストだと考えています。

IPO準備は全体像と優先順位の把握がカギ!

スタートアップ企業がIPO準備を進める上で重要な5つのポイントをご紹介しました。

多忙な毎日の業務と同時にIPO準備を進めていくことは、とても大変なことだと思います。

社内の主要メンバーやキーマンを巻き込みながら、取り組んでいくことがIPOを遅延させないために重要です。

そのためには、IPO準備の全体像と優先順位をしっかり把握して進めてくださいね!


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