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監査難民にならないために知っておきたい監査法人のしごと

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監査難民にならないために知っておきたい監査法人のしごと
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監査法人で働いてるのはどんな人?
実は、監査法人の監査チームは、公認会計士だけではなく、公認会計士試験合格者、アシスタントなどを含めて構成されていることが一般的です。
公認会計士試験合格者は、3年間の実務を経験した後に修了考査を受けます。
これに合格すると、正式に公認会計士として登録され、独立開業なども可能になります。
アシスタントは、簿記等の有資格者や公認会計士を目指して勉強中の方も多いようです。
最近では、公認会計士の人手不足が問題視されていますが、 金融庁「監査業界の概観」によると、公認会計士登録者数は年々増加しています。
一方で、監査法人に所属する公認会計士の数は、微減もしくは横ばい傾向であることがわかります。

公認会計士の数が増加している背景には、上場企業やIPOに対する要求水準が厳しくなったことで、
監査法人に求められる要求事項も多くなり、監査の人手不足に陥っていることが挙げられます。
また、業務の増加等に伴う会計士の監査法人離れが加速しており、
大手監査法人を含め、ますます監査法人のリソース不足が深刻化しています。
監査法人が行うのは監査のみ?
監査法人が実際にどんなことを行っているかは、あまり知られていません。
もちろん、メインとなるのは監査業務ですが、アドバイザリーの提供をしている部門もあります。
監査法人にはIT専門家も在籍しており、以下の事業部が相互に連携しながら各業務を実施しています。
監査部門
金融商品取引法及び会社法監査を担当しており、IPO準備企業に対する準金商法監査も実施しています。
監査チームはクライアントに対してアドバイスを行うことはできますが、
独立性を保持するため、記帳や内部統制構築の実務を行うことはできません。
IT専門家
監査法人にはIT専門家が在籍しています。
現代においては、IT環境がまったく介在しない企業はほとんどありません。
そのため、監査に必要な範囲で、IT環境やITアプリケーションを評価します。
非監査部門
アドバイザリー業務を提供しており、監査意見の表明は行いません。
なお、独立性保持のため、監査クライアントへの業務提供には一定の制限が生じます。
IR情報関連の指導業務なども非監査部門の専門領域です。
監査法人の仕事の進め方は?
企業理解・計画策定
監査業務は企業及び企業環境の理解から始まります。
売上高や資産の残高・企業の内部統制を検証するためには、リスク等の所在を明らかにすることが必要不可欠です。
企業分析を通して、年間の監査計画を策定していきます。
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内部統制の評価
内部統制の評価は、次の2つに大別されます。
① J-SOX(内部統制報告制度)に対応する監査
J-SOX法に基づき、企業(経営者)が自社の内部統制・ガバナンスを評価し、内部統制報告書を作成します。
その上で、企業の評価結果(内部統制報告書)の適正性を監査法人が検証します。
② ①以外の対応
上記のJ-SOXは評価対象となる範囲が定められています。
ですがその範囲外であっても、財務諸表の監査に必要と監査法人が判断した業務プロセスについては、内部統制の評価をします。
例えば、退職者について適切に退職処理がなされていなければ、誤って給与の支払いを続けてしまう可能性があります。
このような事態を防止するための内部統制が有効であると評価できれば、給与発生額の適切性に関する一定の証拠を得ることができます。
期末残高の検証
財務諸表を構成する各勘定科目の残高を検証します。
金額は正確か、発生時期は正しいか等、あらゆる観点から証拠を集め、残高が適切であるという意見を形成していきます。
開示情報の検討
企業が開示する計算書類や有価証券報告書に誤った情報の記載などがないか、開示情報をチェックします。
これは、投資家が意思決定をするために重要な資料です。
監査法人が監査を通じて調査したことは、開示情報が正しいことを裏付ける基礎となります。
計算書類や有価証券報告書には、会計監査人(監査法人)による監査報告書が添付されており、
会社の財務情報が適正に表示されている旨の意見表明が行われます。
監査報告書が必要な期間
上場承認に至るためには、直近2年間の財務諸表に監査報告書を添えなければなりません。
3月決算の企業が2024年の4月の上場を目指していたとします。
その場合、2022年4月~2023年3月/2023年4月~2024年3月の直近2年間分の財務諸表の監査が必要です。
上場準備を、上場目標の3期以上前にスタートするのはこのためです。
監査契約の判断基準
結論、監査法人は監査意見を表明できるかどうかを判断基準として、契約の可否を検討します。
- 監査契約が可能となる条件:
- 監査を受け入れるための社内体制が整備されていること
- 監査法人が提供できるリソース内で監査を遂行できる見通しが立つこと
- 監査契約が難しくなる状況:
- 財務情報に関する資料が著しく不足しており、情報が正しいかどうかを検証できない場合
- 財務情報の検証自体はできても、管理体制が脆弱であり、タイムリーに監査を遂行できないと判断される場合
- 受注可否の判断のプロセス:
- ショートレビュー
- そのタイミングでの監査法人のリソースの空き状況
- 監査法人のコストと企業が監査にかけられる予算(監査報酬)のバランス
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そのため、ショートレビューを受ける前までに、規程類を整備して運用を始められているかどうかや、
実態に沿った内容の資料が適切に管理されている状態にすることが、監査難民※1 にならないための対策と言えます。
また、事前の対策は監査費用を抑えることにもつながり、企業にとってはメリットが大きいです。
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※1 監査難民:監査法人との契約ができず、監査を受けることができない企業や団体を指す言葉
- Interview
Uniforce株式会社 管理部
飯塚 海渡