人材のプロと考えるスタートアップ企業が抱える採用課題

スタートアップ企業の採用における課題や、組織文化の構築について、株式会社JINJI8代表の岡邑亜由美さん、プラスニド代表兼UniforceのCDOである坂尾拓哉さんを交えて、Uniforce株式会社 広報の赤穂がお話を伺いました!


この対談記事に登場する4名のプロフィールです。Uniforce株式会社、株式会社JINJI8

リモートか出社か?
スタートアップが抱える働く環境についての課題

株式会社JINJI8代表 岡邑亜由美さん(以下、岡邑)

私が運営しているJINJI8のクライアントは主に従業員50名以下のスタートアップ企業です。

最大でも250名程度の規模の会社をご支援しています。

中には、50年以上の歴史がありつつも、小さな規模で経営を続けてきたという会社もいらっしゃいます。

弊社の支援サービスでは、採用部門を設けていない会社に対し、採用業務を一次面接まで巻き取ることが多いです。もしくは、採用担当者と一緒に伴走する形でご支援することもできます。


スタートアップ間での優秀な人材獲得競争が激化しており、採用コストの上昇や採用期間の長期化が課題になっています。また、リモートワークの導入により、従業員のエンゲージメントの維持やチームワークの構築が難しくなっていると感じることがあります。

たとえば、10年勤務した経理担当者が、毎日自分しか出勤しない状況になったことで、働く楽しさや仲間との交流などが感じられず退職に至ったケースがありました。


赤穂

部署や担当業務によってリモートワークが可能かどうか異なる場合ですね。


岡邑

そうですね。

ただ、リモートワークの普及によって、今まで来なかった人材層が求人に応募してくれるようになったという側面もあります。

採用代行で韓国籍のコーダー兼デザイナーを採用した事例がありますが、海外ではコーダーとデザイナーはセットであることが多く、高いスキルに代表の方も喜んでおられました。

スキルはあるけど、お住まいの場所や時間の制約で働けなかった方にもご活躍いただけるチャンスが増えたことは、やはりメリットですね。多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材の受け入れ体制を整えることが、今後はさらに求められるのではないでしょうか。


赤穂

多様化する働き方を会社に定着させるために、気を付けるべきことはありますか?

岡邑

定期的なミーティングや社内の交流を増やすことで、解消できる問題もあるのではないかと思います。

みなさん忙しいと思いますが、どれだけ自走能力が高い方であっても、最初のうちは特にフォローすることが必要です。

候補者と採用担当者のカルチャーフィット

赤穂

私もカジュアル面談を担当することがありますが、事業説明のほかにカルチャーや組織風土の話も必ずするようにしています。カルチャー面でのミスマッチを起こりにくくするには、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?


坂尾

入社前にはカルチャーやミッションに共感してくれていたにも関わらず、入社した後にミスマッチが発覚する原因はいくつかあると思っています。


その一つが、採用担当者がそもそもカルチャーフィットしてないパターンです。

採用資料に載っているからMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を伝えてはいる。

でも、内部の人の素養みたいなところが伝わっていない。


そういうことが、採用の現場では起こっているんじゃないかと考えています。会社の紆余曲折やそこにかけてきた想いも、できれば一緒に伝えてほしいんです。その入り口となる面接ってとても重要なんですよね。


赤穂

入社後にミスマッチが発覚した場合でも、挽回することは可能でしょうか?


坂尾

いろいろな会社のブランディングをお手伝いする中で、自社を好きになってもらう方法は一つではないと感じています。

このUniforceの社内にも「Uniforceのパーカー」を着てくれている人がいますが、その会社のアイテムやデザインがみなさんの目に触れることで、少しずつ愛着を持ってもらえるようになったりしますよね。メンバー同士や、部署間のコミュニケーションのきっかけになるものをどれだけ仕掛けていけるかも、カルチャーの浸透には有効な考え方だと思います。

でも、実際に入社したあとに会社のカルチャーに合わないと感じたときには、そこから大きく挽回するのはかなり難しいんじゃないでしょうか。



岡邑

すごく共感します。

たとえば、ご支援する会社の中には、採用説明資料がない会社もあります。

業務の説明はできますが、その会社らしさを伝えられずに困ってしまいます。

そういうときは必ず、MVVなど会社として掲げているものをお聞きするようにしています。

MVVは一応あるけど、そこまで気にしていないとおっしゃる会社だと、改めて大切にしていることや会社のストーリーを言語化するお手伝いをします。

そして言語化したことを企業理念として、入社時研修や定期的な社内イベントを通じて、全社員に周知徹底して、社内の共通言語として浸透させていきましょうとお話しています。


「組織の言葉」が「自分の言葉」として浸透するまで経営者から繰り返し語るといいと思います。

明文化することで社員もそれを自覚し、外に発信できるようになっていきます。

新規事業を作るときにもMVVに沿って考えることができるようになりますし、評価制度導入時にも指標になります。

スタートアップ企業の採用活動で気を付けるべきことは?

岡邑

日本は報酬が低い国と言われていますが、スタートアップや中小企業が大幅なベースアップをするのはなかなか難しいですよね。

カルチャーフィットしてても、条件面で太刀打ちできないこともあります。

逆に頑張ってベースアップして採用をして、他の社員や部署との給与の差に社内の不満が爆発することもありますので、評価制度の導入・見直しは大切だと思います。

ストックオプションは採用活動の手助けになるか?

赤穂

ストックオプションは採用活動を手助けし、退職率軽減につながると思いますか?


岡邑

報酬アップが転職の目的であれば、ストックオプションは刺さる人が多いんじゃないでしょうか。


坂尾

僕も刺さると思います!

今後、セカンダリー取引*が日本にも浸透すると、求職者側のストックオプションに対する捉え方も変わってきそうですが。

*セカンダリー取引:付与された株やストップオプションを未上場の状態でも扱うことができる取引


岡邑

一方で、ストックオプションは具体的な価値の提示が重要だと思います。

指標やある程度の予測を示せることが、採用活動を手助けするようです。


赤穂

私は前職でストックオプションを付与されていて、退職時には本当に悩みました。

いつ行使できるかなど、具体的な条件は働く側にとって重要な判断材料になります。

それをしっかり説明することは、離職抑制になるのではと思います。


坂尾

そうですね。

入社時にしかストックオプションの話をしない会社も多い中で、段階的な付与を設計している会社は魅力的に感じる人が多いようです。

スタートアップ企業の採用活動の難しさ

坂尾

最近特にスタートアップ企業の採用活動を困難にしていることがあります。

一つが、勤続年数についての意識の変化です。

辞めやすい風潮になっていると思っていて、特にスタートアップ界隈では転職することで経歴に傷がつくという考え方は、かなり薄くなってきていると感じます。これにより、慢性的な人材不足を引き起こしているのではと。


もう一つが、リファラル制度についてです。

多くのスタートアップ企業がリファラルでの採用に積極的なのではないでしょうか。

採用に至る確率が高いので、人材難のスタートアップにとってはメリットが大きいと思います。

しかし、リファラル採用の最初の1人目や、影響力の強いマネージャー以上やCXOクラスのリファラル採用では、よりカルチャーフィットの部分に時間をかける必要があるんじゃないかなと。


赤穂

うーん。なるほど。


岡邑

昔の優秀な仲間をリファラルでどんどん引っ張ってきたとき、そこだけは阿吽の呼吸で物事が進んじゃうんですよね。

後からジョインした人たちは、うまく会話に入れないわけです。

そして、だんだんと溝ができてしまう。

そのうちに疎外感を感じて退職に至るということは、いろんな会社で起きていることだと思います。


全員

確かに。(しばし沈黙)

CFO採用を通して見えるスタートアップ企業の課題

赤穂

CFOの採用についてもお聞きできればと思います。

Uniforceには、IPO準備中の企業から「CFOが採用できない」という悲痛な叫びが届きます。


坂尾

「CFOっぽくない」CFOが、実は非常に優秀なケースもあります。

中には、当事者意識を持って自ら営業に行くようなCFOがいて、そういう人はどの会社でも上場させている印象です。

自分の管掌じゃないこともどんどんやっちゃうような、経営者思考のCFOはものすごく活躍するんですが、なかなかいないんですよね。

CFOがいなくてもしっかり準備すれば上場はできるし、それこそIPO準備クラウドなどを活用しながらやることやりましょうというマインドの人を採用するといいですよね。


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岡邑

以前、大手企業で活躍されていた方をCFOとして採用して、早期退職となってしまった経験があります。

その方は戦略を練ることは得意でしたが、スタートアップでは財務や会計の実務から内部統制まで、さまざまな業務を自ら動かす必要があり、そのギャップに苦しまれていました。

経験豊富でハイクラスな方を採用するのも一つの手ですが、財務のエキスパートを採用するか、もしくは既に社内にいる財務担当者と一緒にIPOを目指していくのも有効だと思います。


赤穂

会社の大切な部分を預ける人なので、既に長く働いている社員の方が安心できそうなのですが、やはりCFOというプロフェッショナルを採用したいものでしょうか?


岡邑

少数精鋭の企業の場合、教育体制が整っていないケースも多いです。

そのため、特にCFOなどのポジションでは、経験豊富でハイスペックな人材が求められています。

なにを最重要指標として人材を採用するかという採用戦略の部分は、本当に大切ですね。

後回しにされがちなバックオフィス体制構築の重要性

赤穂

バックオフィス人材の採用が後回しにされがち問題についてもご意見お伺いできますか?


坂尾

バックオフィスは後回しにされがちなのは事実ですね。

売上を立てないと会社を存続させていけないという現実があるものの、それでもバックオフィスの体制は少しずつ構築する必要があります。

特に上場を目指す企業の場合、IPO準備中の約3年で構築できるかどうか分からないほど、時間がかかることだからです。

経理担当者が在籍しているだけでは不十分だということを、認識していない経営者が多いように感じますね。


岡邑

そうですね。

採用も含めてバックオフィス部門は「お金を稼がない部署」と見られがちで、私自身、企業の人事として働いていたときもそう言われたことがあります。

結果として安い報酬での求人になりがちなことも、バックオフィスの体制構築が後回しになる要因かもしれませんね。


坂尾

バックオフィスはただ会社の財務や人事を管理するだけではなく、会社が今後直面する問題点や経営の浮き沈みを察知し、迅速に対処するための部署となります。

事業推進・拡大のために営業やマーケティングを強化する会社は多いですが、バックオフィスも重要な要素であることをぜひ知ってほしいなと思います。



事業の浮き沈みに耐えうる経営基盤の構築

〜JINJI8岡邑代表より〜
スタートアップ企業の経営者・採用に携わる方へ

スタートアップ企業が採用を成功させるためには、企業のビジョンやミッションを明確にして、それに沿った企業文化の醸成や教育制度・キャリアパスの整備をしていきましょう。

また、大企業との違いを理解し、自社の魅力を最大限にアピールすることが大切です。

その際、多様な働き方の導入もぜひ検討してみてください。


採用プロセスの効率化やブランディングは、すでに働いている社員・メンバーのモチベーション向上にもつながっていきます。

自社の現状に合う採用戦略や手順に迷う場合は、採用コンサルタントの活用も有効です。

専門家からの客観的で効果的なアドバイスを得られるのではないでしょうか。



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