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【公認会計士が解説】決算業務のスケジュールと注意点 | 決算業務の進め方

- IPO準備
- 決算開示
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【公認会計士が解説】決算業務のスケジュールと注意点 | 決算業務の進め方
決算とは?決算書作成の目的
\私が解説します/

決算とは、一定期間の企業活動を会計数値として集計・記録し、財政状態と経営成績を明らかにする一連のプロセスです。
またそれを開示することで、企業は投資家や取引先に対して、経営の透明性を確保することができ、企業の健全性や信頼性の評価につながります。

法的な位置づけ
決算は主に以下の2つの法律に基づいて実施されます。
1. 会社法
- 株主及び債権者の保護が目的
- 計算書類(貸借対照表、損益計算書など)の作成が必要
- 株主総会での承認が必要
2. 金融商品取引法
- 投資家保護と証券市場の公正性確保が目的
- より詳細な開示が要求される
- 有価証券報告書等の提出が必要
決算期の選定
一般的な決算期
- 3月期:日本企業の約7割が採用
- 12月期:国際的な企業や外資系企業に多い
- 6月期・9月期:事業特性に応じて選択
決算期選定の考慮点
1. 事業サイクル
- 繁忙期・閑散期との関係
- 在庫調査の実施のしやすさ
2. 業界慣習
- 同業他社の決算期
- 取引先との関係
3. 実務上の影響
- 税務申告期限との関係
- 監査法人の繁忙期との関係
- 従業員の勤務状況への影響
4. IPOにおける考慮事項
- 上場スケジュールとの整合性
- 業績の季節変動の表現方法
- 比較可能性の確保
IPO準備中または上場企業が特に注意すべきポイント
IPO準備企業や上場企業では、一般の非上場企業以上に厳格な会計基準の適用が求められます。
また、業務プロセスの可視化も重要な要素となります。
決算業務に関する内部統制を整備し、その運用状況を文書として残すことで、誰がいつどのような判断で業務を行ったのかを明確にする必要があります。
さらに、決算早期化への取り組みも欠かせません。
決算日から45日以内での決算短信開示を実現するため、月次決算の精度向上や業務効率化を段階的に進めていくことが重要です。
これらに加えて、予算実績管理の体制構築も重要な課題となります。
決算数値の単なる集計だけでなく、予算との比較分析や将来予測を含めた総合的な管理体制を整えることで、経営の健全性と透明性を確保することが求められます。
決算業務についてプロに相談してみたい方は、こちらからお問い合わせください。
決算関連書類の違いを理解しよう
決算書/決算短信/有価証券報告書

決算書とは
- 財務諸表(会社法開示)
- 主な構成書類:
- 貸借対照表
- 損益計算書(大会社*のみ必要)
- キャッシュ・フロー計算書(上場企業のみ必要)
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
*大会社:最終事業年度に係る貸借対照表上、資本金として計上した額が5億円以上、または、負債として計上した額の合計額が200億円以上の会社
決算短信とは
決算短信は、上場企業が決算期末後、最も早く開示する決算情報の速報です。
特徴
- 適時性重視の開示書類
- 投資判断に重要な情報のサマリー
- 監査法人の意見表明前の数値を含む可能性がある
記載内容
- 業績サマリー
- 経営成績・財政状態の分析
- 業績予想
- 配当情報
有価証券報告書の特徴
有価証券報告書は、金融商品取引法に基づく最も詳細な企業情報開示書類です。
有報と呼ばれることもあります。
次に該当する企業で報告義務が発生します。
① 店頭登録会社
②有価証券届出書を提出している会社
③事業年度末時点で株主数が1,000人を超えたことがある有価証券発行者
決算書との主な違い
- 企業の事業内容を含む基本情報の記載
- 事業情報の詳細な記載
- 株式状況や株主・役員の状況、ガバナンス情報の記載
- 経理の状況に関する詳細な注記情報の記載
決算スケジュールの詳細
決算作業フローについては、こちらをご参照ください。
決算月+1ヶ月
1. 各種証憑の収集・確認
2. 仕訳入力・確認
3. 決算整理仕訳
4. 財務諸表案の作成
5. 監査法人による期末監査開始
決算月+2ヶ月
1. 決算短信案の作成
2. 取締役会での決算短信承認
3. 決算短信の開示
4. 事業報告および計算書類の作成
5. 会社法監査報告書の受領
決算月+3ヶ月
1. 有価証券報告書の作成
2. 金商法監査報告書の受領
3. 取締役会での承認
4. 株主総会での承認
5. 有価証券報告書の提出

決算業務の留意点
決算業務は単なる数値の集計にとどまらず、企業経営の透明性と信頼性を示す重要な機会です。
以下の点に特に注意を払いましょう:
- 決算期の適切な選定
- 各種決算書類の目的と要件の理解
- 適切なスケジュール管理
- 内部統制・開示体制の整備
- 監査対応のリソース確保
これらの要素を適切に管理するには、ミスを生まない業務フローの確立と属人化させないためのツール選定が役立ちます。
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- Writer
Uniforce株式会社 管理部/公認会計士
飯塚 海渡